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神戸地方裁判所 平成5年(ワ)1981号 判決

原告

三木卓也

ほか一名

被告

宅間正彦

ほか一名

主文

一  被告宅間正彦は、原告三木卓也に対し、金九三四万二〇六二円及び内八四九万二〇六二円に対する平成二年一二月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告宅間正彦は、原告前田正彦に対し、金一七七万四三六二円及び内一六一万四三六二円に対する平成二年一二月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らの被告宅間正彦に対するその余の各請求及び被告同和火災海上保険株式会社に対する各請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用中、原告らと被告宅間正彦との間に生じた分はこれを五分し、その一を原告らの負担とし、その余を同被告の負担とし、原告らと被告同和火災海上保険株式会社との間に生じた分はすべて原告らの負担とする。

五  この判決の第一、二項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告宅間正彦(以下「被告宅間」という。)は、原告三木卓也(以下「原告三木」という。)に対し、四四七〇万四四八九円及び内四二二〇万四四八九円に対する平成二年一二月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告宅間は、原告前田正彦(以下「原告前田」という。)に対し、一三三五万五〇二七円及び内一二八五万五〇二七円に対する平成二年一二月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告同和火災海上保険株式会社(以下「被告会社」という。)は、原告三木に対し、三〇二万七五〇〇円及びこれに対する平成五年一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告会社は、原告前田に対し、八八万七五〇〇円及びこれに対する平成五年一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告宅間運転の普通乗用自動車に同乗中、傷害を負つて入通院し、後遺障害が残つたとして、被告宅間に対して民法七〇九条により損害賠償を求め、被告会社に対して搭乗者傷害保険契約に基づき保険金の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  本件事故の発生

(一) 日時 平成二年一二月二〇日午前七時二五分頃

(二) 場所 鳥取県東伯郡三朝町大字木地山二二四番地の二付近路上(以下「本件道路」という。)

(三) 加害車 被告宅間運転の普通乗用自動車(以下「被告車」という。)

(四) 態様 原告らが被告宅間運転の被告車に同乗中、同車がスリツプし、本件道路左脇に衝突し、横転した。

2  責任

(一) 被告宅間

被告宅間は、本件道路(国道)において、速度を出し過ぎて運転し、自車をスリツプさせて本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条により、本件事故により原告らが受けた損害を賠償する責任がある。

(二) 被告会社

被告宅間と被告会社間には被告車につき搭乗者傷害保険契約が締結されており、五〇〇万円を保険金額として入院一日当たり七五〇〇円、通院一日当たり五〇〇〇円を負傷した搭乗者に支払うこととされ、後遺症が生じた場合には等級に応じた金額が支払われるとされていた。

従つて、被告会社は右契約に基づき、原告らに対し、保険金を支払う責任がある。

3  原告らの傷害及び後遺障害

(一) 原告三木は、本件事故により、頭蓋骨陥没骨折、頭蓋底骨折、顔面骨折、外傷性頸部症候群等の傷害を受け、次のとおり入通院し、平成四年四月二八日、顔面の著しい醜状が固定し、自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表一二級一三号(以下、単に「何級何号」とのみ略称する。)に該当する旨認定され、平成五年七月二日、嗅覚欠損、知覚鈍麻、癲癇症状が固定し、九級一〇号に該当する旨認定され、右一二級一三号の後遺障害と併合のうえ、八級適用と認定された。

また、原告三木は、右後遺症状の固定後も、右顔面骨折が原因となつて左上額洞炎の症状が現れ、上額洞の洗浄等の治療を受け、上額洞根治術を受けた(右治療も相当な損害として是認するのが相当である。)。

(1) 平成二年一二月二〇日から平成三年一月二八日まで四〇日間清水病院入院

(2) 同年二月一日から平成六年五月一四日まで同病院通院(実治療日数七九日)

(3) 平成五年一一月二六日から平成六年四月二一日まで及び同年五月一六日鳥取大学医学部附属病院(以下「鳥取医大病院」という。)に通院(実治療日数六二日)

(4) 平成六年四月二九日から同年五月九日まで一一日間同病院入院

(二) 原告前田は、本件事故により、第六頸椎骨折、顔面、頭部挫創の傷害を受け、清水病院に四三日間入院し、一三日間通院したが、著しい顔面醜状痕の後遺障害が残り、一二級一三号に該当する旨認定された。

二  争点

1  無償同乗による減額

被告らは、被告宅間は原告ら及び訴外市村楠夫が教師として勤務する高等学校の生徒の父であり、本件事故は約三時間かけてゴルフに行く途中の事故であつたこと、本件事故は凍結した路面でのスリツプが原因であるところ、地元で生活する原告らは、兵庫県西宮市在住の同被告よりも路面凍結の情報やその際の運転方法を良く知つているはずであるのに、同被告に事故回避のための注意をしなかつたことなどから、過失相殺類似の理由で、無償同乗の原告らの損害の三割程度が減額されるべきである旨主張し、原告らの信義則違反の主張を争う。

原告らは、本件訴訟に先立つ訴外市村の相続人らと被告宅間との訴訟(神戸地方裁判所平成四年(ワ)第二三二号損害賠償請求事件(以下「先行訴訟」という。)において、実質的に被告会社の代理人でもあつた被告宅間の訴訟代理人と右相続人らの訴訟代理人であつた本件原告ら訴訟代理人らは、その無償同乗による結論に従つて本件も解決することを合意していたところ、先行訴訟において無償同乗による減額はされなかつたから、本件でその主張を持ち出すのは、訴訟上も信義則に反し、許されない旨主張する。

2  搭乗者保険の時効

被告らは、原告ら主張の搭乗者保険は、医療保険金はもちろん後遺障害保険金についても事故から六か月経過時点で請求が可能であり、未だ症状が固定していない場合もその時点で予想される後遺障害について請求することができ、同請求権は二年の時効期間の経過により消滅するから、本件事故日の二年六か月を経過した平成五年六月二〇日の経過により原告らの当該保険金請求権は消滅したところ、原告らの請求はその経過後であるから、時効消滅した旨主張し、原告らの信義則違反及び時効の中断の各主張をいずれも争う。

原告らは、右時効は、やはり先行訴訟の結論を待つていて被告会社へ請求しなかつたのであり、時効を援用するのは、従前の経過からして明らかに信義則違反であり、先行訴訟の被告宅間訴訟代理人の対応によつて、一審判決のあつた平成四年一二月一八日までは債務の承認がなされ、時効が中断していた旨主張する。

3  原告らの損害額

第三争点に対する判断

一  無償同乗による減額について

1  証拠(甲一、二、四、五、一一、乙一ないし一一、原告ら各本人、弁論の全趣旨)を総合すると、次の事実が認められる。

(一) 被告宅間は、同被告の子供二人が倉吉北高校に入学し、寮生になつたことなどから、同校の教職員と親しくなり、特に教頭の訴外市村及び原告ら教論と親しく、年に数回の割合で四人で懇親のためのゴルフを一緒にしたりしていた。

同被告は、昭和六二年以降は月平均二回程度の割合で自動車により西宮市の自宅と倉吉市方面との間を往復していた。

(二) 原告ら、被告宅間及び訴外市村は、予定どおり、本件事故当日の午前七時頃、三朝町役場で落ち合い、兵庫県佐用郡所在の佐用カントリークラブにゴルフに出かけた。

当初は、複数の自動車に分乗して出かける予定であつたが、同訴外人の提案で、同被告の自動車で四人一緒に行くこととし、助手席に原告三木、後部左座席に同訴外人、後部右座席に原告前田が乗車した。

(三) 被告宅間は、被告車にチエーンを積んでいたが、装着せず、普通タイヤのままで出発した。

同被告は、国道一七九号線に入つてから速度を上げ、本件事故現場の約六〇メートル手前にある千谷橋に差し掛かつた頃には時速七五キロメートルの高速度で走行し、同橋の上付近でスリツプしたことに気付き、あわてて急制動の措置を採つた結果、同車をそのままスリツプさせ、同橋を通過して道路左側のコンクリート壁に激突し、横転させた。

(四) 本件道路は、本件事故現場付近において倉吉市方面から人形峠方面に向けて左側に緩やかにカーブしながら上り坂になつており、制限速度は時速五〇キロメートルとされている。

被告宅間が、三朝町役場を出発してから本件事故現場に至るまでの間において、道路脇に残雪が見られたのは本件事故現場の手前約三〇〇メートルの地点からであり、道路の両側に約五〇センチメートルの幅の残雪が人形峠方面に向かつて続いており、また千谷橋の手前五〇ないし六〇メートルの地点からはアスフアルトの路面上には雪がなかつたものの霜が張つたような凍結が続いていたが、同被告は、本件事故発生までの間に、このような道路状態について全く気がつかなかつた。

(五) 被告車内においては、右のような道路状態や被告車の速度等について、原告ら及び訴外市村から被告宅間に注意ないし助言等は何もなかつた。

2  右認定によれば、原告ら及び訴外市村は、本件事故当時の本件現場付近道路の凍結状況につき、被告宅間同様に気がつかなかつたとうかがわれるが、被告車は本件事故当時制限速度を二五キロメートルも超過して時速七五キロメートルの高速度で運転していたから、運転者でなく同乗者に過ぎない原告らも当然に気がついていたと推測すべきであり、同被告の速度超過の運転を注意しなかつた原告らに全くの落度がないとまではいえない。

その他、右認定の被告宅間と原告らとの関係、同乗するに至つた経緯等を考慮すると、原告らの損害額から一割を減ずるのが相当である。

ところで、原告らは、被告らの無償同乗の主張は、先行訴訟の訴訟代理人間で同訴訟の結論に従う旨の合意がなされていたところ、同訴訟において無償同乗による減額はされなかつたから、信義則に反する旨主張するが、本件全証拠によつても、右合意を認めるに足りる証拠はない。従つて、右主張は採用できない。

二  搭乗者保険の保険金請求権の時効について

証拠(乙一二、弁論の全趣旨)によれば、原告ら主張の搭乗者保険は、医療保険金はもちろん後遺障害保険金についても事故から六か月経過時点で請求が可能であり、未だ症状が固定していない場合もその時点で予想される後遺障害について請求することができ、同請求権は二年の時効期間の経過により消滅すること、原告らの被告会社に対する同保険金の請求は、本訴状が同会社に対して送達された平成五年一一月一一日であることが認められる。

右認定によれば、右搭乗者保険の保険金請求権は、本件事故日から二年六か月を経過した平成五年六月二〇日の経過により消滅するところ、原告らの被告会社に対する請求はその経過後であるから、時効消滅したといわざるをえない。原告らは、右請求も、前記合意に基づき、やはり先行訴訟の結論を待つていたため、遅れたものであり、消滅時効を援用するのは、従前の経過からして明らかに信義則違反であり、先行訴訟の被告宅間訴訟代理人の対応によつて、一審判決のあつた平成四年一二月一八日までは債務の承認がなされ、時効が中断していた旨主張するが、本件全証拠によつても、右合意及び債務の承認の各事実を認めるに足りる証拠はない。

また、原告らが消滅時効により右搭乗者保険の保険金の支払を受けることができなくなつたとしても、格別、原告らに酷な結果になるとまではいえない。

従つて、右保険金請求権が時効消滅している以上、原告らの被告会社に対する請求も理由がない。

三  原告らの損害額について

1  原告三木

(一) 治療費(請求及び認容額) 一七万六五二〇円

証拠(甲一三の1ないし37、二二の1ないし24、二三の1ないし17、二四の1ないし19、二五の1ないし26、二六の2、3、三一の1ないし47、三二の1ないし11、乙一六の1ないし16、一七の1ないし17、原告三木本人、弁論の全趣旨)によれば、原告三木は、本件事故により、清水病院及び鳥取医大病院で治療を受け、自己負担分として一七万六五二〇円の治療費を支払つたことが認められる。

(二) 付添看護費(請求及び認容額・一五万七五〇〇円)

原告三木は、本件事故による入院中、三五日間、近親者の付添看護を受け、その付添看護費が一五万七五〇〇円であることは当事者間に争いがない。

(三) 入院雑費(請求及び認容額・六万一二〇〇円)

原告三木が清水病院に四〇日間、鳥取医大病院に一一日間それぞれ入院し、一日当たりの入院雑費が一二〇〇円であることは当事者間に争いがない。

従つて、原告三木の右入院雑費は是認できる。

(四) 通院交通費(請求額・四〇万〇六八〇円) 二九万〇六八〇円

甲一九と前掲各証拠によれば、原告三木は、本件事故による通院のため、自宅と同じ倉吉市内の清水病院にはタクシーを利用し、その往復代金が四〇〇〇円であつたこと、米子市所在の鳥取医大病院にはJRとバスを利用し、その往復代金が二一四〇円であつたことが認められる。

右認定によれば、鳥取医大病院の通院費用は相当であるが、清水病院の通院に全期間タクシーを利用するのは相当とはいえないから、半分程度を相当な通院交通費とみることとする。

そうすると、同原告の相当な通院交通費は、右両病院の通院期間が前記のとおりであるから、次のとおり二九万〇六八〇円となる。

4,000×79÷2+2,140×62=290,680

(五) 請求関係費用(請求及び認容額・五七〇〇円)

証拠(甲一七、一八、弁論の全趣旨)によれば、原告三木は、本訴提起に必要な書類を入手のため五七〇〇円を支払つたことが認められる。

(六) 逸失利益(請求額・三七七七万四八八九円) 七九四万九三五八円

証拠(甲二〇、三〇、原告三木本人、弁論の全趣旨)を総合すると、原告三木は、本件事故当時、三四歳で、倉吉北高校に数学の教員として勤務し、野球部長と寮の舎監長をしていたこと、同原告は、本件事故の後遺障害のため、すぐに右腕が硬直するため、続けて黒板の文字を書くとか、小さい字を書くことができなくなつたこと、そのため、同原告は、本件事故の前後で給与に格別の差はないが、右部長と舎監長の仕事は辞めざるをえなくなり、その手当てを失つたほか、他の特別手当も多少減額となつたこと、同原告の平成二年分の給与所得は四一四万三九六〇円であつたことが認められる。

右認定及び前記認定によれば、同原告は、本件事故後、多少、収入が減少したに過ぎないが、本件事故後、仕事に相当の支障が生じており、その他の後遺障害の内容、程度、仕事内容、年齢等を考慮すると、本件事故当日頃から六七歳までの三三年間、一〇パーセントの労働能力を喪失したとみるのが相当である。

そこで、ホフマン式計算法により中間利息を控除して、原告の逸失利益の現価を求めると、次のとおり七九四万九三五八円(円未満切捨、以下同)となる。

4,143,960×19.183×0.1=7,949,358

(七) 慰謝料(請求額・一〇〇〇万円) 九〇〇万円

原告三木の傷害及び後遺障害の内容・程度及び入・通院期間その他本件に現れた一切の諸事情を総合考慮すると、被告が本件事故によつて受けた精神的慰謝料は九〇〇万円をもつて相当とする。

(八) 物損(請求及び認容額・一二万八〇〇〇円)

証拠(甲一四の1ないし3、一五、一六、原告三木本人、弁論の全趣旨)によれば、原告三木は、本件事故により、所有のジヤンバー、靴、ブレザー、ズボン、バツグ、時計等を破損し、一二万八〇〇〇円程度の損害を受けたことが認められる。

(九) 原告三木の前記損害額合計 一七七六万八九五八円

(一〇) 無償同乗による減額

本件事故による無償同乗につき原告三木の損害額から一割を減ずべきことは前記のとおりであるから、前記損害合計の一割を減ずると、その後の損害金額は一五九九万二〇六二円となる。

(一一) 損害の填補

原告三木が、本件事故による損害の填補として自賠責保険金七五〇万円の支払を受けていることは当事者間に争いないから、これを右損害金から控除すると、その後の金額は八四九万二〇六二円となる。

(一二) 弁護士費用(請求額・二五〇万円) 八五万円

本件事案の内容、審理経過及び認容額その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、八五万円が相当である。

2  原告前田

(一) 付添看護費(請求及び認容額・一一万七〇〇〇円)

原告前田は、本件事故による入院中、二六日間、近親者の付添看護を受け、その付添看護費が一一万七〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。

(二) 入院雑費(請求及び認容額・五万一六〇〇円)

原告前田が清水病院に四三日間入院し、一日当たりの入院雑費が一二〇〇円であることは当事者間に争いがない。

従つて、原告前田の右入院雑費は是認できる。

(三) 通院交通費(請求額・六万一一〇〇円) 四万〇七三三円

証拠(原告前田本人、弁論の全趣旨)によれば、原告前田は、本件事故による通院のため、清水病院に一三回往復し、その交通費として六万一一〇〇円を要したことがうかがわれる。

右認定にその時期、距離、回数等を考慮すると、その三分の二である四万〇七三三円を相当な損害として認めるのが相当である。

(四) 請求関係費用(請求及び認容額・五七〇〇円)

証拠(甲一七、一八、弁論の全趣旨)によれば、原告前田も、原告三木と同様、本訴提起に必要な書類を入手のため五七〇〇円が必要であつたことがうかがわれ、これも相当な損害として是認できる。

(五) 逸失利益(請求額・一一八八万八七九四円) 〇円

証拠(甲二一、三〇、原告前田本人、弁論の全趣旨)を総合すると、原告前田は、本件事故当時、五〇歳で、倉吉北高校の教務部長(教員)として勤務していたこと、本件事故後、首を回すのが少し窮屈になつたが、行動面での支障はないこと、同原告は本件事故の前後で給与に格別の差はないこと、同原告の平成二年分の給与所得は七〇三万一五四五円であつたことが認められる。

右認定及び前記認定によれば、同原告は、本件事故の前後で給与に格別の差がないうえ、その後遺障害は、著しい顔面の醜状ということであり、首を回すのが少し窮屈になつたものの、その行動面での支障はないのであるから、後遺障害による逸失利益を認めることはできない。なお、右事実は慰謝料の一事情として斟酌することとする。

(六) 慰謝料(請求及び認容額・三三〇万円) 四五〇万円

原告前田の傷害及び後遺障害の内容・程度及び入・通院期間その他本件に現れた一切の諸事情を総合考慮すると、同原告主張金額よりも多いが、同原告が本件事故によつて受けた精神的慰謝料は四五〇万円をもつて相当とする。

(七) 原告前田の前記損害額合計 四七一万五〇三三円

(八) 無償同乗による減額

本件事故による無償同乗につき原告前田の損害額から一割を減ずべきことは前記のとおりであるから、前記損害合計の一割を減ずると、その後の損害金額は四二四万三五二九円となる。

(九) 損害の填補

原告前田が、本件事故による損害の填補として自賠責保険金を含め、二六二万九一六七円の支払を受けていることは同原告の自認するところであるから、これを右損害金から控除すると、その後の金額は一六一万四三六二円となる。

(一〇) 弁護士費用(請求額・五〇万円) 一六万円

本件事案の内容、審理経過及び認容額その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、一六万円が相当である。

四  まとめ

以上によると、原告三木の請求は、被告宅間に対し損害賠償金九三四万二〇六二円及び内八四九万二〇六二円に対する本件事故の日である平成二年一一月一六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払、原告前田の請求は、被告宅間に対し損害賠償金一七七万四三六二円及び内一六一万四三六二円に対する本件事故の日である平成二年一二月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払の各限度で理由があるから、原告らの同被告に対するその余の各請求及び被告会社に対する各請求はいずれも理由がないから棄却することとする。

(裁判官 横田勝年)

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